2007年4月7日土曜日

合奏のススメ

 

私は、基本的に、ひとりで行動するのが好きである。

同時に、人と関わるのが好きな人間でもある。

この矛盾は、私のプレイするオンラインゲーム内でも発揮されている。

普段はソロで好きな所に行って好きな事をして、時々パーティに入れて貰ったり、人と喋ったりする。
オンラインである以上、例えソロ主体でも、どこかで人と関わる事になる。
それがオンラインゲームをやめられない理由でもあるし、時々やめたくなる理由でもあるのだ。

なんだか「オンラインゲーム」を他の言葉に置き換えてもよさそうで、自分でも苦笑いしてしまう。

 

基本は「孤独を愛する私」だが、強い敵を皆で力をあわせて倒すのが、実は一番好きだったりする。
リアルタイムの戦闘だと仲間で声を掛け合うのが大切だが、チャットだけではなかなか上手くいかない。
その難しい状況の中で、みんなの息がぴったり合って、ピンチを脱した時は本当に快感だ。

この快感、何かに似ているなと感じて、思い出した。

合奏、に似ているのだ。

 

高校の頃、私は他校の友人と「バンド」を組んでいた。
決して本格的なものではない子供のお遊びではあったが、それでも人と「合奏」する楽しさは、経験のある方ならお分かりだろう。
私はエレキギターを少しかじった程度だが、皆でガチャスカ演奏するのは本当に楽しかった。

しかし、バンド仲間が他校の生徒だった事もあって、自身の学校で私のバンド活動を知る友人は少なかった。
私の学校の友人が知るのは「アコースティック」の方。 ソロ活動のほうである。

 

音楽に関係ない部に所属していたのに、よく音楽関係の他の部にでしゃばっていた。
合唱部の伴奏に加わったり、部員でもないのに軽音部の部室をウロウロしてたり。

文化祭で中島みゆきの「わかれうた」を弾き語りして、全校生徒をドンビキさせたりもした。

それにしても、もうちょっとこう、高校生らしい爽やかな選曲ができなかったのか。
お祭りやお祝いの席において、決して選んではいけない曲だ。 

何故「わかれうた」でなければならなかったのだ、私。今となっては自分でも謎である。

 

 

そんなある日の事、休み時間にクラスメートが私の所にやってきた。相談があるという。

そのクラスメートのSさんは、普段本当に目立たない静かな人で、それまで個人的に話をした事はなかった。

私のほうは、少々変わっている事をのぞけば自分ではごく普通の高校生だと思っていたが、
当時でいう「ツッパリ系」の友人とよく遊んでいたせいか、なんとなーくそっちのグループだと思われていたようだ。
早い話が、真面目なクラスメートからは少し敬遠されていたように思う。

 

Sさんは、私にこう言った。 「ギター、教えてくれない?」

 

私は驚き、一瞬言葉を失った。 目が、真剣なのだ。

私の事をおそらく「恐いツッパリ」だと思っていたであろうSさん。

そんな私にその言葉を告げるのは、さぞ勇気がいったに違いない。声震えてたし。

しかしその声と表情で、彼女がどれだけ本気なのかもわかった。 モチロン私に断る理由などない。


そうして次の日から、教室の隅で、私と彼女の合奏が始まる事になった。

 

音楽室から借りてきた二本のアコースティックギターで、私たちは練習をした。

実のところ、私など人に教える腕前ではない。
コードとちょっとしたフレーズを知っているだけで、まぁ、あとはノリでなんとかしようという、なんちゃってギタリストなのだ。
元は中島みゆきさんの歌を自分で弾き語りしたいがために始めたギターであるから、弾くというより、歌うための道具だった。

しかし、私程度のレベルでいいなら、私の知っている事を全て教えてあげたいと強く思った。
特にお人よしでもない私にそう思わせたのは、彼女の人柄ゆえだろう。

 

基本的なコードをおぼえる所から始まって、ストローク、アルペジオ、スリーフィンガー…。
教える術を持たない私は、自分がおぼえてきた事をただ繰り返すだけだった。

最初の関門、「F」のバレーコード(一本の指で全弦を押さえる)で、やはり彼女も悩んだようだ。
あまり辛いなら省略コードを教えようと思っていたのだが、なんと彼女は「F」を知って四日目にして、音を出せるようになった。
どうやら、家で猛練習をしていたようである。指が真っ赤になっていた。

 

練習曲の数曲のフォークソングを彼女が弾けるようになった頃、私は彼女に質問した。

「一番弾きたい曲はなに?」

私にとっての中島みゆきのように、彼女にも、これが弾けるようになりたい!と思う曲があるはずだ。

最初に私の所にきた彼女の顔は「ただなんとなくギター弾きたい」という表情ではなかったから。

 

答える代わりに、彼女は鞄から一冊の楽譜集を出してきた。オフコース全曲集。

ああ、そうか。ずっと持ってきていたんだ。気がつかないなんて私も野暮だなー。

彼女はそのうちの一曲を、指差した。 愛を止めないで。 

 

オフコースの曲は、セブンスコードが多かったりして、これまでより少々難しいが、大丈夫。

「F」を四日でものにした努力家の彼女の事だ。セブンスコードもすぐ覚えるだろう。

 

 

数日後、放課後の教室で、私たちは「愛を止めないで」を合奏していた。

それまでの経緯をなんとなく見ていたクラスメートも、音楽室からギターを借りてきて、加わった。

愛をとめないで~ そこから逃げないで~♪

 の大合奏は、それはそれは楽しかった。

 

 

ソロプレイも楽しいが、たまには誰かと一緒にプレイするのも、いい。

 

ゲームも、音楽も、きっと、人生そのものも。

 

 

本日の一曲:「二つのギター」(ロシア民謡) Roby Lakatos


 

ゲームキャラのトルネコを悪役にしたような太ったおじさんだが、演奏ものすごく上手。
あのコロコロした指からどうしてあんな音が出るのかしら。

二つのギターは昔から大好きなロシア民謡。
これは純粋なギターバージョンではないけれど、彼の演奏したこの曲が一番好きです。

 

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